ある少女との別れ

3月は別れの季節。私も一人の少女の家庭教師の職を、よんどころない大人の事情で辞することとなった。

その少女のお宅には小学校入学と同時に家庭教師として訪問指導を開始し、2年生の終わりまで指導を続けた。実に聡明で明るく、将来が期待できる女の子で、指導を打ち切ることはしごく残念な結果であった。

指導の最終日に、私は連絡ノートに、彼女へのエールを書いて送った。そのお宅を辞する時、その少女から一通の封筒と花束をいただいた。予想外の出来事だった。その手紙には、このように綴られていた。

 「2年間ありがとうございました。いままでの思い出はわすれられません。今後の先生とでも、せいいっぱいがんばります。たぶん、今後の先生はきびしいと思います。けれどもせいいっぱいがんばります。一生わすれません。でも、さよならは言いたくありません。なぜなら、先生が心からいってしまうからです。ありがとうございました。」

さらに折り紙で作ったカードが同封されていて、それには、「先生、大好き」と書かれていた。

私は、これを帰りの電車を待つホームで読んだ。

とめどなく涙が流れた。

このような師弟の関係は、そうたやすく作られるものではない。2年生の少女の思いが凝縮されているような気がして、ほんとうに感動した。そして、なんと1ヶ月もの間、その花束は私の心を癒してくれた。 きっと今頃は新しい先生と勉強に励んでいることだろう。私もさよならは言わないでおこう。

グレイススタディケアはこのように、心と心が触れ合うような指導を心がけている。だから、単なる塾として考えてほしくはないし、そのような師弟のふれあいを大切に考えている。それでも、いつかは別れの時は来る。その別れはこのように爽やかに、感動を共有できるものにしたいといつも考えている。