不登校からの私立中学合格

初めて悠太君(仮名)と出会ったのは悠太君が小学校5年生の1月でした。公立小学校に通う悠太君が学校から足が遠のいたのは、5年生の1学期。お友達との人間関係が上手くいかなくなったのがきっかけのようです。
お母様からお問合せをいただきお宅に伺ったのが年明け早々。1時間半ほど時間をかけて、これまでの生育状況、不登校に至った経緯、お母様の懸念されていること、これからどのようになってほしいかなど丁寧にお話をお聴きしました。
私からはこれまでの経験を踏まえて、現状感じたこと、どのように関わるか等のご説明をしました。
私が心がけていることは、先ずはお母様に安心していただくことです。お母様の不安はストレートにお子様に伝わりますから。
そして、具体的にどのようにすれば良いか一緒に考えていきます。お母様も一人で抱えていた悩みを打ち明けることができて、ほっとしたご様子でした。
お母様としては、やはり学習の遅れが気になっているとのことで、算数、国語を中心に指導してほしいとご依頼を受けました。
その日は悠太君とは挨拶程度に留め、次回訪問のお約束をしてお宅を辞しています。

さて、実際の指導が始まります。といっても、すぐにバリバリ学習が進むかと言ったら、それは夢の世界の出来事です。最初は悠太君の好きなように過ごしてもらいました。悠太君、お決まりのYouTube、TikTokから片時も目を離しません。時折、私が話しかけて会話をします。その会話の内容がなかなか核心をついています。色々なことを悠太君なりに考えている様子。
頃合いを見計らって、少し勉強しない?と促すと得心した様子で算数のドリルに向き合ってくれました。計算の速いこと速いこと。どうやって計算したの?と思わず聞いてしまいました。
悠太君の得意そうなことを優先して指導を進めていくうちに、すっかり打ち解けて、すぐに仲良くなることができました。

教科指導は、ご家庭で用意なさっている毎月送られてくる教科書準拠の教材を使って進めることにしました。お母様が今日はここをお願いしますとおっしゃる範囲を、悠太君と進めます。初めて習う単元ですからすぐに自力ではできません。必要な知識、考え方を伝えると、理解してどんどん解き進めてくれます。
もちろんそのスピードは時によって、単元の難しさによって偏りはありますが、概ね良好に進んでいきました。
指導のペースは週に1〜2回ほどでした。

ある時、ひょんなことから、なぜ学校へ行かなくなったのかを話してくれたことがあります。
悠太君によると、お友達が嫌なことを言ってくる。その時、言い返せなくて手が出てしまった。それで喧嘩になり、先生に言ったら「喧嘩両成敗」と言われてしまった。僕は悪くないのに…。そういう趣旨でした。
事の真相、捉え方は様々あるとは思いますが、本人がそう思い、学校に足が向かないという現実があるわけです。一旦は「そうなのね。」と受け止めて、特に私からは何も言いませんでした。

6年生になると、委員会活動やクラブ活動への参加がきっかけとなり、授業にも毎日ではないにせよ、復帰できるようになりました。

そうこうするうちに、都内にある中高一貫の、とある私立中学を受験したいとの意向をお母様から伺いました。
その学校について調査をすると、一般的な学力試験の他に、プレゼンテーション入試を実施していることがわかりました。プレゼンテーション入試は、テーマに沿った授業を聞き、それに基づいた作文を書き、その内容を土台として発表するというものです。
授業に私自身が参加することはできませんが、内容を整理して作文を構成するお手伝いはできます。
また、発表の練習も何度も行いました。

そして、なんと!見事に合格を果たしたのです‼︎!
その中学校は少人数で、悠太君にとっては最良の選択でした。中学校に入学後は、大きなトラブルもなく、学校に通学し、今ではバスケ部に所属する爽やかな高校生です。